今回は日本の陶芸家の作業風景を観た外国人の反応です。
映像の陶芸家は、栃木県の益子にて作陶を行っていらっしゃる松崎健氏。
大学で陶芸を専攻し、卒業後は人間国宝の故島岡達三氏に師事し、
5年間の修行を経て独立。その後は独自の陶芸技術を確立していきました。
大阪市内にある阪急うめだ本店では1980年から今現在まで毎年一度、
アメリカやイギリスなど国外でも、これまで多くの個展を開いていらっしゃいます。
松崎氏が作り出す作品には、日本の多くの茶碗同様、「歪み」が見られます。
あえて不完全とも思える形に仕上げる。
その点に関して、外国人から様々な意見が寄せられていました。
Ken Matsuzaki "Throwing Chawans" (Teabowls) - extremely rare footage ■ クールだなぁ。俺も轆轤(ろくろ)が欲しいよ。
アパートメントの中でやるのって難しいかな???
アメリカ ■ この人は、本物の美しさってものを解っているんだね。
アメリカ ■ 俺も本当にそのとおりだと思うよ。
イギリス■ 轆轤それ自体が陶器を作るものではないことは分かってるけど、
この動画を観た今、そして今まで作ってきた経験的に、
自分は足踏み轆轤が好きなんだってことが分かった。
より落ち着いて、熟考しながら、最も素晴らしい不完全さを生み出せる。
生徒として一般的に教えられていたことは間違っている。
イギリス ■ 「素晴らしい不完全さ」っていうフレーズが好きだ。
イギリス ■ 同意! 完璧に左右対称なものを作ろうとしちゃうんだよね。
私も前に動画の先生みたいな作り方に挑戦したんだ……。
簡単そうに作ってるけど、実際はとんでもなかった :)
元々歪みを作る作陶に強い敬意を持ってたけど、それが跳ね上がったもん!
不完全さって、本当に美しいものだと思う。
アメリカ■ 見事な陶芸技術。そして出来上がった陶器自体も素晴らしい。
この動画を投稿してくれてどうもありがとう。
イギリス ■ 思わず畏敬の念を抱いてしまう崇高さが感じられる。
アルゼンチン■ これぞマスターと言うべき技術だよ。
僕は陶芸家たちが魅せる技術の美しさに魅了されてる。
ちなみにああいったタイプの轆轤は初めて目にした。
いつか自分もあの先生に陶芸の技術を教わりたい。
アメリカ■ たぶんこれを言ったら非難轟々なんだろうと思うけど、
ああいう形の崩れた茶碗は評価出来ないな。
定年を迎えた世代の生徒が見た目だけでも先生に近づこうとして、
よくああいう形の陶器を作ってるじゃん。
アメリカ ■ ↑君には不完全さの中に内在する美が見えていないんだね。
イギリス■ 素晴らしい! あそこで使われてる粘土の名前は何だろうか?
アメリカ ■ 益子という街の近辺で掘り出されたものだよ。
だけど申し訳ない。正式な名前は分からないんだ。
投稿者 ■ 個人的には、陶器の見た目はあまり気にしない。
でもこういう作品は評価できないという意見に賛成だ。
映像の作品は、確かに形が崩れて見えるしね。
もしあの茶碗がお店で販売されていたとしたら、
きっと僕は初心者が作った作品だと思うだろう。
アメリカ ■ つまりさ、日本人はアジアのフランス人なんだよ……。
少なくとも陶器に対する審美性はそうだと言える。
彼らは「完璧」な作品だって当然作ることが出来る。
実際マスターたちによる、「完璧」な作品もいくつか見てきた。
だけど、彼らは完璧性なんか求めてないんだよ。
無秩序で、中心を持たず、不規則な物に魅力を見出す……。
自然が生み出した作品のような仕上がりになるからだろう。
一見粗悪に見えるけど実はそうではない作品を作る為には、
実際に色んな技術が必要になるんだよ。
アメリカ ■ 「『粗悪』に見える作品」どうこうって話じゃないでしょ。
あの先生は途中まで、完璧な形の陶器を作ってるじゃん。
だけどそれをにわかに変えちゃってる。
その背景には、作品に不完全さを包含させるっていう考えがある。
最高傑作とされる陶器には、ワビ・サビの精神が頻繁に見て取れるわけで。
不完全さは欠点として浮かび上がるわけじゃない。
それどころか、美しさの根源ですらあるからね。
型にはまらないことによって生まれる独創性が、
既成品にはない意味や美を作り出すんだと思う。
アメリカ ■ 分かる……。
その結果、独創的で美しい物になるんだよね。
イギリス ■ チャワンはどう作られるべきかを知らないからそう思うんだよ。
作品に魂や個性を与えるために、あえて形を崩して作られるんだぞ。
安心してくれ、この人は陶芸の技術を極めた人であって、
完璧に左右対称になってる小さなお椀を作ることだって出来る。
でもそれだと、独創性がなさ過ぎるって思われちゃうんだよね。
他の日本の陶器を見れば、左右対称な作品も見つけられるよ。
でもチャワンは、君が求めてるとおりには作られてない。
アメリカ ■ 技術の中に美しさが見て取れる。スタジオも素敵ですね。
アメリカ■ この人が生み出す作品は、なんて平和的で、思慮に富んでいるんだろう。
この光景を観れたって言うことは、僕にとって素敵な経験だった。
オーストリア■ 7:30 縁の形が崩れちゃった瞬間本当にビックリした。
見事に修復していったけどね。
アメリカ 
■ WOW……こんなに酷い陶芸作りの光景は初めて観た……。
俺が初めて作った時ですらあれくらいのモノ作れたもん。
グーグルでこの人の他の作品をイメージ検索して見てみたら、
本当に素晴らしい作品ばかりだったけどね。
そのぶんこの動画の光景に混乱してるんだ!
アメリカ■ 日本の伝統的な茶碗は一見無造作に作られるもんだ……。
それが神道的な美なんだよ。
アメリカ■ マエストロであり、素晴らしい審美性を持った人……。
彼の作業場や道具を見れてすごく嬉しい。
作品の素晴らしさはもちろんのことだけど、
先生ご自身も、厳格で、魅力的な人ね!
イタリア ■ 不完全な完全さってやつですね :)
アメリカ ■ この見事なまでの素晴らしさよ。
多くの人が簡単そうだと思うであろうモノを生み出すこの技術。
日本の陶器はシンプルって思ってる人が多いから、簡単そうに見えちゃうんだろうね。
この動画を観たあと、より日本の陶器の素晴らしさが分かった。
アメリカ ■ ちゃんと制御したまま不完全とされる作品を作るのって、
びっくりするくらい難しいことだと思うぞ。
アメリカ■ 不完全さの中に完全さが宿ってるのは分かるよ。
だけど動画の作品は中心部分すらないじゃないか……。
アメリカ■ ただただあの技術の魅力に惹きこまれていった!!!
スペイン■ 美しい作品や、いわば芸術を職人が作り上げていく様子を観るのは大好きだ。
だけどあの作品に関しては駄作と言うべきだと思う……。
偉大な陶芸家であるケンに敬意がないわけじゃないからね。
アメリカ ■ チャワン作りを極めるには、人生を捧げるような努力が必要なんだぞ。
チャワンのすべての形の要素に意味があるんだから。
それから、あの不完全さにはハッキリとした意図があるし、
チャワンの美の質を高めるためには必要不可欠なんだ。
アメリカ■ 素晴らしい作品じゃないか。
もちろん趣向は人それぞれだから、あの見た目が嫌いな人がいてもいい。
だけど駄作だの素人並みの出来だのっていう批判は、
俺には到底受け入れられない。
アメリカ■ ケン・マツザキは偉大な陶芸家だね。
有名な陶芸家に弟子入りしながらも、自分のスタイルと技術を築き上げた。
彼が持つ美に対する哲学が作品からありありと伝わってくるよ。
イタリア 形に対する美意識の違いは、庭園にも現れている気がしますね。
西洋では左右対称に作り、人工的な「完璧さ」を大事にし
(イギリスで発展した自然風景式庭園などもありますが)、
日本では空間に自然を作り、自然的な「不完全さ」を大事にする。
対極的でありながら、そのどちらにも美が宿るのだから、面白いものです。
ちなみに日本国内で焼かれた茶碗で国宝に指定されているのは、
志野茶碗(銘「卯花墻」)と
楽焼白片身変茶碗(銘「不二山」)のみ。
そのどちらも、「歪み」のある造形になっています。
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