今回は、イギリスの若者たちの間で人気が高まる、
翻訳小説の人気にスポットを当てた、
英紙「ガーディアン」の記事からになります。
記事は日本の文学のみを取り上げているわけではないですが、
それでも3分の1ほどが日本文学への言及になっています。
「とある調査では、英国では昨年の翻訳小説の売り上げが、
2021年と比較して22パーセント増加したこと、
そして35歳以下の読者の間で最も人気があることを示した。
若者が購入するフィクション作品の31パーセント以上を、
海外からの翻訳小説が占めており、この数字は伸び続けている。
アプリで情報を集めている若者世代のアトキンは、
SNS上で流行している『カオス』な作品の代表例として、
村田沙耶香氏の『コンビニ人間』を挙げる。
『誰もが彼女の本について、これまで読んだ中で、
一番「Disgusting(ヤバイ/不快)」だと言います。
みんな、自分の限界を押し広げてくれるような、
そういうものを読みたいという願望があるんです』。
日本人作家といえば、川上未映子氏の「乳と卵」も人気だ。
インターナショナル・ブッカー賞を管理するロッコ氏は、
日本の小説が若者たちの間で人気を博す理由をこう指摘する。
『若者たちは、日本の文学作品に触れている時、
古くから"正典"と見なされていた西欧の言語とは、
まるで違うものを読んでいるという感覚を抱くのです』。
実際に、昨年イギリスで販売された200万冊の翻訳小説のうち、
50万冊弱は日本の作品であり、単独で一番人気の言語であった、
という事実をロッコ氏は教えてくれた(漫画の売り上げは含まず)」
日本語の翻訳者として定評のあるルーシー・ノース氏は、
現在の英国における日本文学ブームに驚かない。
ではなぜ日本文学がブームなのだろうか?
この疑問に、ノース氏は以下のように話した。
『日本の作家は短編小説を得意としています。
物語は静かに流れ、ドラマチックではなく、
多くの場合批判的ではない傾向があります。
批評や反対意見もありますが、ベールに包まれています。
ミステリ的な要素があって、若い読者には魅力的なんです』。
日本文学の最前線で活躍する出版社の1つが、
アダム・フロイデンハイム氏が経営するプーシキン・プレスだ。
島田荘司氏の密室犯罪を扱ったミステリ作品から、
川上未映子氏の「あこがれ」などの文学作品まで、
近年の日本文学ブームの先陣を切ってきた。
フロイデンハイム氏は、
『川端、三島、谷崎など、日本は長い文学の伝統を持つ大国です。
それでも、日本文学の多くには何か奇妙で、
変わったものがあるのです」と語る。
氏は続けて、日本文学のテーマの多くが、
欧米の関心事と関連している一方で、
例えば女性の権利に関するテーマなどで、
『少し違ったレンズ』を通して見られる事が多いと指摘した」以上です。
記事の関連投稿には、様々な反応が寄せられていました。
その一部をご紹介しますので、ごらんください。
「日本の小説が大好きになった」 アニメの影響で太宰治が世界的な人気作家に
翻訳元
■■■■■ アメージング!!!
こういう現象が起きてるなんて素敵なことね!!!
+2 ■ 川上未映子さんの初めての英訳作品であり、
ルイーズ・ヒール・カワイによる見事な英訳である、
「あこがれ」が紹介されてるのが凄く嬉しい。
短いけど、物凄い影響力を持つ作品だから!
+7 ■ 同じく。正直嬉しい驚きだった。
+2 ■ 川上未映子さんの英訳デビュー作は「乳と卵」だけど、
それを知らないレビューをよく見るのは何でなんだ?
■ 恐らくは「あこがれ」のエージェントが、
「自社の作品こそデビュー作」、
という印象を与えたいんじゃないかな。
+2■ そう言えば、1999年に初めて英国に移り住んで、
こっちの出版業界に入ったときに、
イギリスはドイツの業界に比べると、
翻訳小説の出版数が少なくて驚いた覚えがある。
+1 ■ 記事の注目すべき作家の中に、
サマンタ・シュウェブリンが入っているのが素敵だ。
彼女は昨年、ミーガン・マクダウェルが翻訳した、
「七つのからっぽな家」という作品で、
全米図書賞翻訳小説賞を受賞したんだ。
+4 ■ 彼女は素晴らしいですよね。
前に作家のジョン・フリーマンが私に、
「彼女は村田沙耶香を彷彿とさせる」
と言っていたけど、その意味が私にも分かります。
+3 ■ うん、それは理解出来るね!
僕も村田沙耶香との共通性を見出したよ。
+2 □ 昨年、イギリスでは翻訳文学の数は同じように急増したが、
その半分近くが日本のマンガによるものだった。
だから日本語が再び1位になったのだろう。
そうであれば、記事がその点に触れないのは少し不誠実だ。
マンガの読者をマンガ以外の文学の読者に変えられるのか。
僕が考える本当の問題はそこにある。
「日本の成功を研究しよう」イタリアの人気漫画家が日本漫画の世界的独占状態に言及 ■ 記事には「マンガは含まれない」と書かれてるよ。
+2 □ 速く読みすぎてしまった!
だけどここ数年のマンガの盛り上がりを考慮すると、
日本の文学も読まれているのはちょっと驚きだ!
何かしらかの変化が起きてるのだろうか。
+1 ■ そうなる事を願ってる。
特に若者にウケてるようだね。
+1 ■ この記事はとても興味深く、
インスピレーションを与えてくれた!
イギリスで読まれている翻訳小説のうち、
日本文学の比率がこんなに高いなんて……。
翻訳小説の人気は新しいトレンドなのかな?
+3 ■ そう、新しいトレンドと言える。
特に村田沙耶香さんの「コンビニ人間」は、
このトレンドを生み出したとされる作品の1つ。
+15 ■ 「コンビニ人間」の翻訳は、
あらゆる称賛と評価に値しますね!
+5 ■ 実は事前のインタビューでは、
私はマンガやライトベルについても言及した。
それが若者に影響を与えた可能性があったから。
今後がどうなるかは私も想像しか出来ない。
(※記事にも登場した、翻訳家のルーシー・ノース氏)
「マンガは若者の価値観を変えた」 日本の漫画がフランスの書店の救世主となった実態を仏公共放送が特集 ■ 日本文学の他の欧州言語への翻訳に関する情報はありますか?
特に仏語への日本文学の翻訳動向に興味があります。
■ 個人的には翻訳モノはどうしても受け付けない。
置き換えられない何かがあると感じるから。
短編小説を翻訳した経験があるけど、
自分自身は読むのは避けてる。
■ 例えば「百年の孤独」のような傑作でも、
スペイン語から英語に翻訳する際に、
何かが失われてしまうんだろうか?
■ 今はネットの時代だし、海外の本を探すのはずっと簡単。
若い読者(記事では35歳以下の人々について述べている)は、
異文化の本を調べたり探検したりすることに、
精通しているのかもしれないな。
+4 ■ 「不快」な文学だと言われてる事が興味深いと思わない?
村田沙耶香の「不快」な文章は、
実はこの記事の中で2回言及されてる。
それだけ大きな影響力があるって事だよね。
+2 ■ 「不快」だの「おぞましいだの」と表現されて、
正直言うと、最初は少し驚いた!
■ メジャーではない言語が母国語で良かったと思ってる。
自分の国には優れた翻訳作品の非常に強い伝統があって、
その影響もあってか読者は一般的に、
異なる国や文化で書かれた物に凄く好奇心が旺盛なの。
「実に日本人らしい感性だ」 夏目漱石の『I LOVE YOU』の訳し方が美し過ぎると話題に■ これは正しい方向への大きな一歩だ! おめでとう。
+2 ■ 日本の作家さんたちの特徴として、
おそらく一般的にネガティブに捉えられることでも、
恐れることなく書いていく点にあると感じてます。
■ そうだね、それは日本人作家の特徴だと思う。
もちろん「不快」という表現は妥当ではないが。
新しいジャンルだったと言えるだろうね!
■ 読書とは発見であり、自分たちの文化の「外」を読むことは、
若者たちにとって、新たな世界観に挑戦する事なんだろうな。
+8
とうとうアニメや漫画などだけではなく、小説まで人気に。
いずれも特に若者たちの胸に刺さっているというのが、
非常に象徴的な事実だと思います。
なお、「Disgusting」を「不快」と、
そのままの意味合いで捉えている方が多かったですが、
記事本文における若者代表のアトキンさんの用法は、
良い意味での「ヤバイ」なんだろうと思います。
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